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富山家庭裁判所 昭和33年(家イ)219号 審判 1959年2月24日

申立人 伊能トシ子(仮名)

相手方 村山政夫(仮名)

主文

一、申立人と相手方は本日限り内縁関係を解消する。

二、相手方は申立人に対し内縁関係解消に伴う慰藉料として

金二三万円也を支払うこと。

上記の支払いは

(イ)昭和三四年三月一〇日限り金五〇、〇〇〇円也

(ロ)昭和三四年三月より昭和三九年二月迄毎月三、〇〇〇円宛を

その月の二五日迄に

夫々富山家庭裁判所に寄託して支払うこと。

三、当事者双方は本件に関し上記各項以外に今後如何なる名義を以つてするを問わず、財産上、身分上互に何等の請求をしないこと。

四、本件調停及び審判費用は各自弁のこと。

理由

申立人は相手方に対し、内縁関係解消及びそれに伴う慰藉料、財産分与として金五〇万円並に申立人が居住するにたる家屋(宅地付)一棟を分与するとの調停を求め、申立の理由として申立人は相手方と昭和二三年四月○日頃挙式の上、相手方住所に於て、夫婦生活に入つたが、本件申立時迄適式の婚姻届はしなかつた。それは申立人には前夫との間に一女を有し、又相手方も先妻との間に七人の子女を有し、そのため生活は苦しく本籍地役場より入籍のため戸籍謄本を取寄せの余裕の金もなく、更に申立人の連れ子である子女と相手方の長男と将来婚姻させてくれるものと思慮し、入籍の必要をさほど認識しなかつたからであり、且同棲以前より相手方は住所地に於て理容師をなし生活を維持していたものであるが、同棲当時生活は前記の如くことのほか苦しく、申立人の献心的なる努力により暫時生活程度も向上し、近年に至り生活も安定してきたが、安定してくるにつれ、申立人に対し暴行虐待を加え、そのため以前より頭の働きが悪いということを自覚していたが、その度に他人に会つたり話をするのも嫌になつたが家事生活をなしてゆくために不便はなかつたのに昭和三三年一二月○日嫌がる申立人を精神病院へ連れて行き数分の診察で精神分裂病と診断された。

そのため昭和三三年一二月○○日相手方より理不尽に暴力をもつて実家へ帰されたものであるが、これ迄に生活が安定してきたのは申立人の努力の賜であるから相当なる慰藉があつてしかるべきで、本件調停申立趣旨の条件に応じてくれるならば内縁関係解消に同意してもよいと考えているというのである。

依つて当裁判所は昭和三四年一月二〇日第一回の調停委員会を開きたるところ、当事者双方は内縁関係解消には異議なきも、慰藉料、財産分与について合意に至らず、且つ相手方は内縁関係解消を正当化づけるため、調停委員会に対し申立人に対する昭和三三年一二月○日付の○○市○○町一〇番地、精神科医師、竹田福作製にかかる精神分裂病の診断書を提出した。

そこで調停委員会は申立人の病状の程度を知悉する必要があり、調停委員会の決議により家事審判官は家庭裁判所調査官に対し、申立人の病状及びその程度並にその他調停進行のための参考事項について調査を命じ、その調査報告の結果新たに○○県立○○病院精神科医長、○○木○○医師を調停委員に指定し、昭和三四年二月一六日第二回調停委員会を開き、調停委員会の席上、申立人の挙動、問診等より診断の結果、調停進行のための意志能力は充分あるものと認めたので、調停委員会は調停を続行し調停案を提示したるところ、相手方は調停案を受諾するも、申立人は調停申立の趣旨の条件を固執し、尚考慮を求めたので、次回期日を指定し昭和三四年二月二四日第三回の調停委員会を開きたるところ、申立人は前回調停期日に於て示された調停委員会の調停案に対し強い不満を示し、調停に応ずることができぬ旨申述べ、調停委員会の勧告に応じないため、調停の成立に至らなかつたものである。

そこで考えて見るに当事者双方は内縁関係を継続する意思のないことが明らかであるため、調停委員清水久孝、同飯野竹男の意見を聞き、更に当庁家庭裁判所調査官小林義信の調査報告書に基き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を観て当事者双方の申立の趣旨に反しない程度で事件解決のため、家事審判法第二四条第一項の規定により主文のとおり審判する。.

(家事審判官 布谷憲治)

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